狭山裁判第3次再審請求集会に参加して
2019.10.31 日比谷野音
1963年に狭山市で起きた女子高校生誘拐殺害事件では石川一雄さんが逮捕され、一審死刑、二審無期懲役となり、現在仮釈放中。再審請求中で、裁判所、弁護団、検察との三者協議が何年にもわたって行われている。犯人を取り逃がした警察が被差別部落に目を付け、石川さんを逮捕。差別のために小学校にもほとんど行けず、正しい字も書けず、知識も不足していた石川さんを、警察は脅しと泣き落としで自供させ、数々の偽の証拠をでっちあげる。また、メディアは「部落民ならやりかねない」と偏見を煽った事件だった。
二審の寺尾正二裁判長は、「私は部落問題を勉強している」と言って弁護団を安心させ、部落問題には触れずに判決を出す。それが1974年10月31日である。
当日は弁護団や部落解放同盟からの報告、石川さん夫妻からの挨拶、袴田巌さんのお姉さんや冤罪事件に関わる足利事件、布川事件の元被告からも話があった。また個人として今も国家権力と戦っている鈴木宗男議員、元検察官で元長崎市長からの話もあった。後者は、「自分の信念と良心に従い、正しいことは正しいこととして、誤った裁判を正したい」とはっきり述べた。石川さんは「刑務官に、文字を覚えて自分で真実を語れ」と獄中で密かに援助を受けて識字能力を獲得した。これまでにも無実を証明するたくさんの証拠が提出されてきたが、採用されなかった。しかしようやく、証拠とされた万年筆のインクが被害者のものではないとの科学的で厳密な証拠が出され、検察が反論できずにいる段階に来た。再審の扉が開かれる直前まで来た。無罪を獲得して、ご両親の墓参りを実現してもらいたいと思う。
集会後は銀座のデモを行った。
なお「ウィキペディア」で『狭山事件』を見たところ、「石川犯人説もある」など、十分に検証されておらず、客観性に欠ける記述があることを多々発見した。そのまま受け取られることに危機感を覚えたので、ここに記す。
府川幹夫
教員の働き方改革として勤務時間を年単位で管理する「変形労働時間制」の導入を文部科学省が目指していることを受け、高校教員らが28日、導入見送りを求めて約3万3千人分の署名を同省に提出した。
同制度は繁忙期の勤務時間の上限を引き上げる代わりに、夏休み中などに休日をまとめ取りできるようにする狙いがあるとされる。しかし、署名を集めた教員らは、かえって長時間労働の悪化を招くとした。
署名は岐阜の県立高校教諭の西村祐二さんらが9月からインターネット上で始めた。西村さんは28日に同省で記者会見し、「1日8時間労働という原則を目指すべきだ。変形労働時間制にすると、無制限の労働を余儀なくされる」と訴えた。
年単位の変形労働時間制は労働基準法が定めているが、教員は対象外。導入を可能にする教職員給与特別措置法(給特法)の改正案が開会中の臨時国会に提出されており、成立すれば自治体の判断で2021年4月から導入が可能になる。
教員の働き方改革 改正案 衆院委員会で可決
2019年11月15日 19時00分 NHK News Web
公立学校の教員の働き方改革を推進するため、夏休み期間中にまとまった休日を取るなど、1年単位で勤務時間を調整する制度を、実施できるようにする法律の改正案は、15日の衆議院文部科学委員会で自民・公明両党などの賛成多数で可決されました。
この改正案は、公立学校の教員の働き方改革を推進するため、夏休み期間中にまとまった休日を取るなど、1年単位で勤務時間を調整する「変形労働時間制」を条例によって、実施できるようにするなどというものです。
15日開かれた衆議院文部科学委員会で、改正案の採決が行われ、自民・公明両党と日本維新の会などの賛成多数で可決されました。
一方、野党側は「休みのまとめ取りができるからといって、繁忙期には、さらに長時間労働になる可能性がある」などとして、反対しました。
また、委員会では条例などで教員の在校時間の上限を定めることや、長期の休業期間の部活動や研修の縮減を図ることなどを政府などに求める付帯決議が、共産党を除く各党などの賛成多数で可決されました。
改正案は近く、衆議院本会議でも賛成多数で可決され、参議院に送られる見通しです。
危機的な国会審議状況
現在、国会で教員の「働き方改革」に関連し、給特法の改正案が審議されている。
この記事を執筆した時点では、衆議院の文部科学委員会において、野党会派(立憲民主・国民・社保・無所属フォーラム、日本共産党)の反対にも関わらず、自民・公明両党と日本維新の会などの賛成多数で可決されてしまった。
NEWS WEB 「教員の働き方改革 改正案 衆院委員会で可決」2019年11月15日 19時00分
筆者も、この法案が審議された衆議院の文部科学委員会において、参考人として反対の立場で意見陳述をさせていただいたが、拙速且つ不十分な審議経過には、正直いって驚きを隠せない。
これから、衆議院本会議、参議院での審議が残されているが、このままでは法案の問題手すら明らかにならずあっさり成立してしまうのではないかと、強い危機感もある。
そもそも、この法案の全体像は、以下の通りである。
法案の重要部分である、一年単位の変形労働時間制導入については、私も既に下記記事を書いている。
【筆者執筆・Yahoo!ニュース個人記事】
公立学校教員への1年単位の変形労働時間制導入は社会にとっても有害無益
この法案では、政府は法案提出の前提として、以下の認識の下で法改正に着手していることは重要だ。
○ 我が国の教師の業務は長時間化しており、近年の実態は極めて深刻。
○ 持続可能な学校教育の中で教育成果を維持し、向上させるためには、教師のこれまでの働き方を見直し、子供たちに対して効果的な教育活動を行うことができるようにすることが急務。
(法律案概要より)
要するに、「教師の業務は長時間」「実態は極めて深刻」であり、教育の質を維持するため「教師のこれまでの働き方を見直」すことが「急務」であるとの認識を示しているのだ。
この点には、この法案に対して賛成・反対の立場を超えて異論はなく、ここは争点ではないのだ。
争点を見誤るべきではない
本来、国会で争点とされるべきは、その「急務」であるとの認識の下、本法案がその対策となり得るものなのかだ。
その点が国会で審議されるべきなのだが、私が把握する限り、到底その点が審議尽くされたとは思えない。
参考人への質疑でも、深刻な長時間労働の実態、教育の質を維持する工夫、抽象的な教員の働き方の見直しなどばかりが議論されていた。
本来議論されるべきは、一年単位の変形労働時間制導入が、その対策たり得るのかであるが、そこは議論が深まっていないように思う。
先行配信した記事でも触れたが、そもそも休日まとめ取りに変形労働時間制導入など不要だ。
そもそも、休日のまとめ取りを実現したいのであれば、地方公共団体が休日まとめ取りが可能になる条例を設ければ足りる。国がそれを推奨したいのであれば、法律で、地方自治体が条例でこれを可能にすることを定めればよい。
地方公務員である教員の労働条件は、勤務条件条例主義により、基本的には条例で決められる。だから、単純に条例で「8月に連続した特別休暇を与する」と定めれば、狙いである「休日まとめ取り」は可能なのだ。
わざわざ労働基準法の一年単位の変形労働時間制を持ち出す必要がないのだ。
なお、衆議院文部科学委員会では、岐阜市教育委員会教育長の早川三根夫氏から、岐阜市における夏期休業中に16日間連続の学校閉庁日を実施してている実例が報告されている(ただし、有給休暇等の既存休暇のまとめ取りによるもののようだ)。
現行制度上でも、休日まとめ取りは可能なのは、この岐阜市の例からも明らかなのだ。
しかも、既に先行配信した記事で触れたとおり、この一年単位の変形労働時間制導入時に、対象となる教員の意見を反映する手続きでもあり重要な労基法上の要件である労使協定が除外されているという点でも大問題だ。
なお、勤務条件条例主義とはいえ、実は地方公務員についても、法令条例に抵触しない限り、職員団体と当局の書面協定の締結が認められてる(地公法55条9項)。だから、万が一にも変形労働時間制を導入するなら、せめて書面協定が必須要件となるような法整備が歯止めとしては不可欠だ。
変形労働時間制は、1日単位・1週間単位の労働時間規制の「枠」を取り払う、危険な、例外的な制度だ。
だからこそ、労働基準法には、対象者や対象の労働時間などを詳細に定めた労使協定を定めて、監督機関である所轄の労働基準監督署への届出を義務づけている。また、恒常的な長時間労働の職場では導入できないともされている。そうった、厳格な縛りもなく変形労働時間制を導入するなど、許されないことだ。
実は、変形労働時間制は、多くの職場で既に導入され、労働「時間」削減ではなく、「残業代」削減、残業代不払いの「脱法」手段として悪用されている。
ただ、給特法のある教員の場合、現在も残業代がゼロであって、残業代削減のため導入メリットはない。それなのに、あえて導入をする狙いは、繁忙期の残業時間を減らし、みせかけの残業時間を削減することにあるとしか考えられない。
その本音を隠し、見栄えの良い「休日まとめ取り」が可能となるのだというデマを流し、労基法を歪める改正を通そうとするのでは、政府の対応はあまりに無責任だ。
日本労働弁護団が緊急集会を開催!
私が所属する日本労働弁護団では、なんとしても国会でこの法案について充実した審議を尽くしてもらいたいと、緊急集会を企画した。
◇日時 2019年11月24日(日)10:30~(10:00開場)
◇場所 連合会館2階
(詳しくはこちらをご覧ください)
当日は、日本労働弁護団からのご報告に加えて、Yahoo!ニュース個人でもおなじみ、教員の働き方改革問題をリードしてきた内田良氏(名古屋大学准教授)、現職教員でこの間の署名活動など精力的に取り組んでこられた斉藤ひでみ氏(近時公表された実名は西村氏)、参議院文部科学委員会参考人で意見陳述された工藤祥子氏(教員の夫を過労死で亡くされた過労死遺族であり、ご自身も元教員。神奈川過労死等を考える家族の会代表)、教員を目指す学生さん、教員労働組合の方などから、ご報告をいただく予定である。
ぜひ、ご参加ください。
2019/11/17 10:34 誤記訂正しました
嶋崎量
弁護士(日本労働弁護団常任幹事)
1975年生まれ。神奈川総合法律事務所所属、ブラック企業対策プロジェクト事務局長、ブラック企業被害対策弁護団副事務局長、反貧困ネットワーク神奈川幹事など。主に働く人や労働組合の権利を守るために活動している。著書に「5年たったら正社員!?-無期転換のためのワークルール」(旬報社)、共著に「裁量労働制はなぜ危険か-『働き方改革』の闇」(岩波ブックレット)、「ブラック企業のない社会へ」(岩波ブックレット)、「ドキュメント ブラック企業」(ちくま文庫)、「企業の募集要項、見ていますか?-こんな記載には要注意!-」(ブラック企業対策プロジェクト)など。