2017年出版の『だから、2020年大学入試改革は失敗する』で大学入試共通テストへの記述式問題導入の失敗を予言した著者が今度(2023・12・15出版)は「GIGAスクール構想」の失敗を予言している。
「GIGAスクール構想」は経団連の「Society
5.0構想」=AIを活用しサイパー空間と現実空間を融合させることで新たな提案・付加価値の高い情報等を現実空間にもたらす社会=を実現させようとする国家戦略の文科省が担うワンピースだから最初から結論が決まっている議論が行われている。だからデジタル教育が児童・生徒に及ぼす教育的効果や影響、予想される問題点や課題、それらに対する具体的手立てや解決策などの緻密な議論なしでICT環境の整備がどんどん進められていると状況分析をしている。
塾の経営者でもありネットやスマホに関する著書もある筆者はネット空間に生きる子供たちの生活や意識に詳しい。そうした子供たちの声、生活や意識の実際、結論ありきの事柄について上意下達体制が確立している現在の教育体制のもとで行われる調査・アンケートの問題点、教育現場の実態とはかけ離れた研究授業の在り方や教師の仕事量、実現に向けて行われている様々な審議会での議論内容や審議委員の力量と忖度などなど様々な角度から具体的事実をもとに丁寧に検証しながら「GIGAスクール構想」の危険性を訴えている。
オランダでは授業中にICT機器を使用することで児童・生徒の集中力の低下や成績への悪影響が生じているとして2024年1月より教室内での使用を禁止し、デジタル教育先進国のスウェーデンでは義務化していた幼稚園(6歳未満)のデジタル学習を終了させるなどデジタル先進国はデジタル教育にブレーキをかけ始めていることを紹介し、日本はこうしたデジタル先進国の轍を踏まないよう一旦立ち止まることを提案している。
さいたま市は以前よりICT教育に情熱を注いできた。そしてコロナ禍を契機にして一気に一人一台のタブレット配布を実現させ、まさに「GIGAスクール構想」の全国における旗振り役を務めようとしている。デジタル教科書が導入される今年(2024年)4月からは今まで以上に「GIGAスクール構想」の大波がさいたま市の教職員には押し寄せてくるだろう。構想への賛否は様々だろうが構想の問題点や課題を知っておくことはその大波に立ち向かうためにも必要なことではないだろうか?
組合員I.T
2023年8月4日~6日埼玉教組が取組む「第27回ヒロシマに学ぶさいたま子ども代表団」が広島に派遣されました。引率者の一員となったさいたま市教組の女性組合員の感想を掲載します。
『なぜ?を問い続ける大切さを再認識!』
核兵器の使用禁止が叫ばれても核兵器はなくならず、今現在も、ロシアが核の脅しでウクライナを侵略して核戦争の危機はさらに高まり、人類滅亡を示す終末時計は10秒縮まり、90秒になってしまった。
原爆の事は、いわゆる教科書や毎年テレビなどで視聴する程度の知識程度しか持ち合わせておらず、実際広島を訪問して知ることも多く、自分自身の目で見て感じることが非常に多かった。
平和資料館で目の当たりにした当時の生徒達が実際に身に着けていたとされる衣服や帽子、弁当箱や水筒などがあった。衣服は原型をとどめているものの千切れていたり血液のような跡があったりと身に着けていた方々がいかに想像を絶する状況だったかを示していた。なかでも草履を見た瞬間、アメリカのワシントンD.Cにある国立ホロコースト記念博物館にも似たような靴が山積みになっているコーナーを思い出した。ここの博物館のコンセプトは、第二次世界大戦でのナチス・ドイツが行ったユダヤ人大量虐殺をテーマにしており、当時の資料や写真の他に映像、模型、強制収容所の内部を再現した部屋などが展示してある。なぜ、ドイツが戦争に向かったのか、ナチス・ドイツの台頭から国民の洗脳、組織的な大虐殺へ至った経緯が分かるようになっている。当時は、人体実験の動画や沢山の死体が入り込んでいる写真などを見終わった後は、ただただショックを受けたことは覚えているが、ワシントンのホロコースト博物館はなぜアメリカにあるのかなど当時の私はそこまで考えが及ばなかった。
自分が知ろうとしなければ、真実は見えてこない。誰かから与えられた情報のみを何も考えずに鵜呑みにしてしまえばそれ以上の情報を自らが集めることはしないだろう。広島と長崎に原爆が落とされた。多くの人命が奪われ、放射線の影響を長きに渡って受け苦しんだという事は変えることの出来ない事実である。では、なぜ原爆が落とされたのか?ここに、疑問を持って自分なりに答えを導き出す日本人はどれだけいるだろう。特に、これからの未来を担う若者世代はどうだろうか。
今回の、広島への訪問を通して、代表団の子どもの皆さんは、平和について考えることをやめないで欲しい。若い世代が平和について考え続けることが大切である。そして自分自身も平和と何か自問自答しながら日々アンテナを高くし、情報を取捨選択していきたいと思う。
2023年7月14日
日本教職員組合が「持続可能な学校のための7つの提言」を出しました。
持続可能な学校のための緊急提言 日本教職員組合
提言1
「わかる授業」「楽しい学校」づくりのために、教員の授業の準備の時間を確保することが必要です。
提言2
すべての校種で少人数学級の実現が必要です。
提言3
さまざまな背景をもつすべての子どものために、教職員の拡充とスクールカウンセラー等の専門職の配置・拡充が必要です。
提言4
子どもがゆとりある学校生活をおくるために、学習指導要領の内容削減など、学ぶ内容の見直しが必要です。
提言5
若手教職員をサポートするために、人員配置の拡充も含めた業務軽減が必要です。
提言6
教員が本来業務に専念するために、文部科学省の示す 「業務の役割分担・適正化」を文部科学省の責任においてすすめることが必要です。
提言7
教員のいのちと健康を守るために、「定額働かせ放題」の「給特法」の廃止・抜本的見直しが必要です。